エコロジカルトレーニング

オンラインで教えている塾のアルバイト、もう一年以上やっているのですが、一人の生徒に対して一年続いたことがありませんね。9か月は多分受け持っていたことありますが、それ以上はないな。同僚も大体そんな感じみたいですね。まあそもそもわからないことを聞いていくシステムだし、オンラインだしで割と使いづらい形態の塾ですよね。京大生が教えているのがウリにしているのですが、まあこちらに裁量が任せられているので教え方も一人一人異なりますし。自宅でできるので個人的には楽だと思うので続けているのですが、こうも生徒がころころ変わるとなかなか難しいですね。そんなこんな言っていますが、一時期数学を担当していて毎週が勝負でしたが、今は英語のみ。英語は正直易しいですね。楽しく教えられますし。




昨日のフットボリスタはやっぱり面白いですね。何度でも読み返しができます。今日はトレーニングの話。

かつては下部組織というのは、トップチームに至るまでのレールの通過点、つまりシンプルに子供がサッカーに触れて技術を鍛え、トップチームを目指す場所という組織でした。これは確かに大原則ではあるのですが、細かくサッカーがデザインされ、さらにいわゆる「売るチーム」と「買うチーム」がはっきり二分化してきている現代ではそれだけではない付加価値(こういうと言葉は悪いですが)をつける必要性が出てきます。そうして、各チームは独自の色を出していくようになっていきました。中にはバルセロナの下部組織、ラ=マシアのようにひたすらに受け継がれてきたポジショナルサッカーのDNAを体に染み込まる練習を重ね、育成という点では少し異彩を放っているチームもありますが(その結果ラ=マシア上がりで試合に出れない選手が他のチームにいっても思うような活躍ができないことがままあります)、いわゆる「ビジョン」を育てる、平たい意味での「視野」ではない素養を伸ばそうとするチームも現れてきています。

一口に天才といっても様々なものがあります。足が速い、抜群に足元のテクニックに優れている、身長が高いし反射神経も常人のそれではない…といったようなフィジカル的なものから、相手の呼吸を外して信じられないようなパスを出すことができる(=ファンタジスタ)、全く予期せぬところにパスを出すことができる(イニエスタとかまあメッシとかですね)、そういう天才もいるわけです。天才はやはり先天的なものであり、意図的に生み出すことはほぼ不可能。

しかし、圧倒的な個だけでサッカーは戦うものではありません。11人が優れた思考を持ち、リアルタイムで推移していく状況の中で、同じ攻め方を頭の中で共有していればそれは最強の矛になる。チームとして天才が生まれる。この11人を生み出そうと最新のトレーニングスタイルを取り入れたチームがフランスのモナコです。ある程度サッカーに詳しい人ならチーム名は聞いたことがあるでしょう。今はアーセナルのレジェンドのアンリが監督を務めていることでも有名ですね。その前監督レオナルド=ジャルディムが取り入れたトレーニングがエコロジカル=トレーニング。日本語で言うと生態学トレーニングですね。チームを『個の集まり』としてとらえるのではなく、『プレイヤーが集まった生態系と考え、そこにおいて各人がそれぞれの長所を発揮してさらに発展していくもの』ととらえるところからスタートです。もう自分でも何言ってんのか分からないですね(笑)。生物の分野の内容が本格的に入ってくるみたいで、林舞輝さんも「フットボリスタよんでわかった気になるな」とおっしゃっていましたし、まあ私も詳しく生物を学んではいないのでこれ以上は厳しいですね。でも何となく書かれたものを私なりにまとめてみると、

①まずロングボール、パス回しといったような攻撃の明確な型は存在しない

②では何が大事なのかというと、普段の練習から培ってきた連携、および互いの癖やスタイルを熟知したうえでの的確な連携(言っちゃえば私たちがウイイレやFIFAでやっているようなものですね)

③そのため、普段の練習ではゲーム形式で行い、様々なシチュエーション、タスクを与えてそこから各自の癖や思考パターンを他者が認識したり、統一したりすることであらゆるシチュエーションに応じて攻め方、守り方を共有することができる

ってところですかね。私はもうざっくりと「ウイイレでやっているような一人で考える思考を11人全員で共有するように促すトレーニング」って解釈してます(笑)。

普通のチームと何が違うのっていうのはもっともですが、一番異なるのは①の部分、いわゆる「ゲームモデル」が存在しないこと。サッカーの攻撃において当たり前ですが監督あるいはチームによってオフェンスの哲学を持っています。例えばバルセロナならパス、昇格した時の鳥栖は豊田にロングボールを当てて、波状攻撃を仕掛ける…というように。しかし、パスを主体に攻めるチームがパスを回すことばかりに意識がいって肝心のシュートに持っていくことができない、とかロングボール中心のチームがロングボールを回収しきれずにひたすら守備に追われる…というような悲劇も往々にしておきます。

このエコロジカルサッカーではチームは「生態系」ですので決まった型を有しません。あるのは時間をかけて作られた相互依存の関係、共有された意識だけです。だから「これはボールを持てそうだな」となったらポジショナルサッカーの形態をとるだろうし、「裏に走らせた方がよさそうだな」と感づいたらロングボールを主体に使う攻め方になる。変幻自在なサッカーが可能になります。

まあ、確かに実現すれば無敵のサッカーです。実際に2014-15シーズンのモナコはパリサンジェルマンを抑えて優勝しましたし、CLでもセミファイナルまで進みました。ムバッペを筆頭にバンジャマンメンディ、ベルナルドシルバ(二人はシティ)、マルシャル(ユナイテッド)、カラスコ(アトレティコ⇒中国)、クルザワ(PSG)、ファビーニョ(リバプール)、トマレマル(アトレティコ)とこれだけのメンツが育っています。

全員残ればビッグイヤーも夢ではなかったでしょう。しかし、モナコは残念ながら「売る」チーム。主力は引き抜かれていくのが常です。

これだけ毎年主力を引き抜かれているとやっぱり連携に割く時間も短くなるし、それは相互関係が絶対的なエコロジカルサッカーにおいては致命的なことです。今シーズンのモナコの停滞はここに詰まっているのでしょう。ジャルディム監督を解任して、アンリを監督デビューさせたモナコ、コーチとしてはなかなか有能みたいですが(ベルギー代表コーチ時代は慕われていたみたいですね)、この路線をぶれずに続けていってほしいものです。

古都のサガンティーノ

サガン鳥栖サポーター。大学生。試合の日記、読了本、メモ等々日々の記録。

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